答弁書は訴状を読めないと書けない

訴状の入っていた封筒には、答弁書の記載例(サンプル)が同封されていたと思います。ただ、これを見ても答弁書は書けません。

答弁書を適切に書くには、訴状に書いてあることの意味がわからないといけないからです。

そこで、答弁書の具体的な書き方に進む前に、訴状の読み方を簡単に解説します。

訴状には文字がびっしり書かれてあって、圧倒されてしまいそうですが、読むべきポイントはそう多くありません。

それでは、訴状に書かれている順に、見ていきましょう。

裁判所、日付、原告・被告の住所・氏名

裁判所は原告とあなたとの裁判を担当する裁判所です。

日付は、訴状を書いた原告(相手)が勝手に書き入れるものですので、訴状が裁判所に提出された日であるとは限りません。ただ訴状を提出した日の目安にはなります。

あなたが会社の代表者などの場合には、会社とあなた個人の両方が被告になっている可能性がありますが、これは訴状を見れば分かります。「被告」という記載のあとに会社の住所と会社名、代表者名だけが記載されていれば、訴えられたのは会社だけです。他方、その後にさらに「被告」という記載とあなた個人の住所、氏名が記載されていれば、訴えられたのは会社と個人の両方です。

原告に弁護士がついていれば、その弁護士の事務所住所、電話番号、弁護士名などが書いてあります。

事件の種類、訴訟物の価額、貼用印紙額

訴状の、被告の住所、氏名の次あたりに、「○○事件」、「訴訟物の価額」、「貼用印紙額」と書かれているところがあるかと思います。

○○には、例えば「損害賠償請求」など、事件名(事件の種類)が書かれています。

この事件名(事件の種類)は、答弁書にも記載する必要があります。

訴訟物の価額とは、裁判で原告が請求しているものを金銭的な大きさに換算したものです。金銭を請求された場合は、その請求されている金額と概ねイコールです。「訴訟物」の意味を知る必要はありません。

訴訟物の価額は、貼用印紙額に影響します。だから並んで記載されています。貼用印紙額とは、原告が訴状に貼った収入印紙の金額です。

ところで、あなたに送られてきた訴状には印紙が貼られていません。これは、あなたの訴状が「副本」という、写しだからです。裁判所に提出された訴状の「正本」には、ちゃんと印紙が貼られています。

話が逸れましたが、訴訟物の価額が大きくなると、つまり原告が裁判で請求する金額が大きくなればなるほど、訴状に貼らなければならない印紙の金額も大きくなります。

因みに、答弁書には印紙を貼る必要はありません。念のため。

請求の趣旨

被告は、原告に対し、○○万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払い済みに至るまで年5%の割合による金員を支払え」などと書かれているところです。

この請求の趣旨は、原告がこの裁判で何を求めているのかが端的に表現されたものです。

端的に、というのは、何の件で、何が原因で、といったことが省略されており、原告の求めているものの結論しか書かれていない点を指します。どんなことが原因で請求されているのかは、次の項で説明する「請求の原因」に書かれています。

原告が100%勝訴した場合には、この請求の趣旨と同じことが、裁判所が出す判決の主文に書かれてしまいます。

理由はともかく、結論として請求の趣旨に書かれてあることを認めることができない場合は、それなりの態度を答弁書において示さなければなりません。これについては「答弁書の書き方その3-請求の趣旨に対する答弁」で説明します。

訴訟費用

「訴訟費用は被告の負担とする」などと書かれていると思います。訴訟費用とは、上で説明した印紙代など、原告が裁判をするためにかけた費用のことです。答弁書を書く上では気にしなくてよいです。

仮執行宣言

「仮に執行することができる」などと書かれている場合もあります。答弁書を書く上では気にしなくてよいです。

請求の原因

なにゆえ請求の趣旨に書いてあるようなことがいえるのか、根拠となる事実が具体的に書かれているところが「請求の原因」です。量的にも訴状の大部分を占めているはずです。

あなた(被告)から見ると、この「請求の原因」には、事実であることも事実と違うと思われることも書かれているはずです。

そして、あなたが答弁書に書くべきことの中心は、この「請求の原因」についてのことです。

すなわち、請求の原因に書かれているひとつひとつの事実に対して、認めるのか認めないのかあるいは知らないのかといったようなことを明らかにすることが、答弁書作成の主要な作業となります。これについては「答弁書の書き方その4-請求の原因に対する認否」で説明します。

あなたが答弁書で否認したこと、つまり認めないと主張したことは、「争点」となります。原告と被告とで主張が食い違うところですね。

被告としては、争点とすべきところは漏れなく争点としなければなりません。そのためにも、「請求の原因」については、それこそ一字一句おろそかにせずに精読する必要があります。

証拠方法

訴状の本体は「請求の原因」までです。この本体が終わると、「証拠方法」という項目があるかと思います。そこに、甲1号証○○、甲2号証○○、、、などと書かれているはずです。ここには、原告が提出した証拠が記載されています。

そして、この甲1号証などとスタンプされた書類は、実際に訴状に同封されていたかと思います。甲1号証の「甲」は、原告の出した証拠(甲号証)を指します。あなた(被告)が出す証拠は「乙」号証となります。

乙号証のスタンプは裁判所や弁護士会の売店に行けば売っていますが、買う必要はありません。赤のサインペンで「乙1号証」などと手書きすれば充分です。

なお、裁判所や相手に提出する証拠は現物ではなくコピーです。現物にサインペンで書き入れる必要はありませんのでご安心ください。

附属書類

特に説明の必要はないと思います。原告が訴状といっしょに裁判所に提出したものです。このうち「甲号証」(写し)はあなたのところにも届いたはずです。